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こりゃ変だと気づきつつ|『極楽に至る忌門』

夏といえばホラー。ホラーといえば法螺話。嘘からでた誠。嘘のようなホントの話。なんでも続けてれば何かしらの花が開くというが、いいことばかりでもなさそうだ。極楽へ至らない者だらけ。

芦花公園『極楽に至る忌門』を読む。夏といえばホラーですのでね。

由来の良くわからない仏さま、猿とも天子ともつかない怪物、これらの存在を匂わせながら展開される3つの中編(短編)で構成された1冊だ。

友人の帰省に付き合ってさ

両親を失って祖母と暮らして大学進学とともに上京してきた男。それを友人に持つ主人公。都会と田舎とを峻別するような差別心への嫌悪、公平心から2人は気が合ったらしいが、その男から帰省に誘われて付き添うことにする。

田舎では何故か男の家は爪はじきにされており、公平な主人公はそれも気に入らない。で、到着した晩の早々から友人の男はすでに様子がおかしくなっており、ということもなく、少し出てくるといったまま姿を消す。祖母と取り残されて食事を摂っていると電話が鳴り、なぜか主人公が受話する。

奇妙な電話を終え、男の祖母とも険悪な感じになった主人公はすすめられるまま風呂に入り、入浴中にその祖母が死ぬ。大胆な展開だ。

祖母の葬儀だ。近隣住民がテキパキと準備を進め、すんなり終わるが、主人公は何故か滞在を続ける。ここでさんざん公平だ正義だと自認していた主人公の不誠実が明かされる。えぇー、なんかめんどくさいなぁ。

その負い目を解消するために、謎の儀式に巻き込まれていき、渋いエンディングを迎えるのだが、すべてを読んでから思い返すと判明する事実もあれば、やはりよくわからないこともある。祖母のひとり勝ちか?

やっぱり怖いのは人間だってさ

田舎から上京した秀才女史は就職先でメンタルをやられて祖母のもとに帰省、もとい寄生することにした。といっても、人生に見切りをつけようということらしいので、一時的なものだ。いや、むしろ迷惑じゃん。

で、彼女の両親もすでに謎の物故をしており、帰省直前に祖母も物故した。展開が早くて勢いがある。いいですね。やはり鬱陶しい近所の女が色々と面倒を見てくれたということになるが、こいつもどう考えても異常者だ。

この女も鬱陶しいし、人生も鬱陶しいので苦しんでいるなか、祖父の代から所有する山に仏様がいるという。で、同時に猿が登場するようになる。彼女はなかば夢遊病のようになって、過去の時代の誰かの記憶と体験の交換がはじまる。

疲労を重ねる彼女だが、ある日、物故した母の日記が都合のよいタイミングで、手元に届く。そこに記されていた真実に愕然とする主人公だが、むしろそれでキレイさっぱり、生きる元気が湧いてくる。人間って怖いね。

死に執着するんだってさ

頭でっかちな小学2年生が主人公。やはり祖母宅(珍しく祖父もいる)に訪問し、従姉と納屋にあった「ジュマンジ」をプレイすることになる。もはや意味が分からない。が、まぁおもしろいからいい。

この双六、クリア即ちゲームオーバーという超絶クソゲーで、みごとに従姉は発狂してしまう。悲しいね。が、少年もターゲットにはなっていたらしい。が、もう少し言うと、家(血筋)とその土地がもうダメらしい。大変なことですよ。

で、親戚一同(18人だっけ)がなんとか粘れないかとやっているうちに、神隠しのようなのに遭って終わる。バイビーである。なお、発狂した従姉とその母は病院にいたために一命は取り留めた。どっちが幸せだったのかね。

3つの話の種明かしのような内容を多分に含むので、前の2つの話の解像度も上がるが、死後に潜る「忌門」を巡る人間の浅はかさというのがあるようだ。で、死に対する意識の差が騒動とホラーの引き金になっている。とまで、言ってしまうとルール違反のような気もするが…。

とにかく祈れってさ

前話から登場する魔眼をもった超絶霊能力者がいるが、本当に能力を持っているのかは最後までよくわからない。が、カッコいいのでそれでいい。本話は種明かしのあとの答え合わせのような内容とでも言うか。

仏は仏教とは関係のない紛い物で、猿も別にただの動物ではないけど善も悪もなかった。ただ、人間の欲とそのバーターとのバランスが崩れていっただけだ。

どこかの山中で祈るようにと超絶霊能力者が、本話の主人公に語り掛けるが、なんでこの場所なのか。すべてのお話は四国地方らしいし、どこも同じ名字しかいないという特性はあるが、別にまったく同じ土地というワケでもない。

というわけで(どういうわけで)、何故か知らぬが、彼は祈らせられる。

本作のもっとも怖いところは、おそらくこれだ。

2話目は際どいところだが、主人公らはなんら判断していないのに巻き込まれるように、アカン行動をしてしまう。特に3話目の小学生が顕著で、賢しいにしても小学生なので、という留保がつくのが余計に問題を孕んでいるが、彼よりも年齢のうえの人間たちの意見に流され、ババを引き続ける。

これなら霊感商法で金銭をむしられる方がなんぼかマシなのである。

極楽へ至らない者だらけ。

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